生瀬(なまぜ)は現在では西宮市に位置しますが、江戸時代には丹波・播磨と摂津を結ぶ街道の要衝として「生瀬村」と呼ばれ、幕府から宿場に指定されていました。
起源は鎌倉時代で、浄土宗西山派開祖である証空上人の導きで武庫川に橋を架け、旅人を助けたと伝われています。
ここから、蓬莱峡を経て有馬温泉へと向かう有馬街道の森の中に「生瀬温泉」と刻まれた明治34(1901)年の銘のある大きな石碑があります。
この生瀬温泉は、明治29(1896)年に土地の有志が温泉を掘削し温泉旅館を経営しましたが、交通の便が悪く5年後に閉鎖しました。
石碑から少し下った場所に石組の露天風呂の跡が今でも残っています。
少しは離れた場所に、泉源があり10年ほど前まではこの井戸からブクブクと温泉が湧き出て、赤くさびた鉄管からは間欠泉が噴き出していました。
近くで行われている国道176号線の拡張工事の為か、100年以上も生きていた温泉が枯れてしまったのは残念です。