現代人は、体の芯に残るようなぐったりとした精神的疲労を背負った「半健康人」が多いのではないだろうか。
適度なスポーツの後に感じる”さわやか疲労”とは根本的に異なる疲労感だ。
心の病に加え、アトピー性皮膚炎、気管ぜんそく、過敏性腸症候群など、現代の社会構造が背景に潜む慢性疾患も問題になっている。
温泉療法の中には、これら「現代病」に対する、ひとつの処方箋がありそうだ。
現に私たちは、温泉に入ると心身ともにリフレッシュすることを肌で感じている。
西洋医学が普及する前は、湯治という日本独特の療法が生活の中に根づいていた。
ヒポクラテス(古代ギリシャ)の時代には、エーゲ海のコス島で温泉療法が試みられていたし、欧州はクワハウスを中心に温泉医療を展開する先進地でもある。
そして今。
温泉の効用は医学的に十分解明させたのだろうか。
予防・保養・臨床の現場で、そのサイエンスは生かされているのだろうか。
(本文より)
目次
・温泉とは何か
・温泉とはどのようにして体に効くのか
総合的生体調整作用
・温泉治療の現場から
皮膚病
アトピー性皮膚炎
ぜんそく
循環器疾患
脳卒中のリハビリ
慢性関節
リュウマチ
胃腸病
ストレス性疾患
健康保養地としての温泉
・ひと味違う入浴法
天然砂むしで循環促進
出版情報
出版社名:講談社現代新書
著者名:飯島 裕一(著)
発行年月日:1998年10月20日
著者プロフィール
飯島 裕一 (いいじま ゆういち)
1948年、長野県上田市生まれ。
北海道大学水産学部卒業。
信濃毎日新聞社入社、報道部、整理部、文化部などを経て、94年4月より編集委員。
医学を中心に、科学分野のルポを執筆。
著書に「疲労とつきあう」(岩波新書)「脳 小宇宙への旅」(紀伊國屋科学選書)「老化を探る」(紀伊國屋書店)など