【温泉漫遊記】その弐 「癖になる温泉」 新潟県 新津温泉

良い香りとはいえないけど実は好きな臭い(におい)というのがある。

自分で脱いだ下着や靴を嗅いで、なぜか安心してしまう。

そんな臭いのランキングは、文房具屋・新車の車内・マニキュア・紙袋や包装紙・図書館などを押し退け堂々の一位はガソリンスタンドだそうだ。

ガソリンや石油、灯油は、化石燃料を加工したもので何億年も前の生き物が死んで海底にたまり、熱や圧力・バクテリアなどによって変化したものだと言われている。

日本でも少量だが採掘されているらしい。

古くは、日本書紀に天智天皇7年(668年)7月、越後国より天智天皇に「燃ゆる水(燃水)」が今の新潟県胎内市より献上されたという記述がある。

当然これは採掘をしたものではなく、自然にわき出た原油で「くそうず(臭水、草水)」などと呼ばれていた。

新潟県に 元々は石油を採掘していたのが石油は出なくなって温泉だけが残ったとか、石油を掘ろうと思ったら温泉が出たとか、その開湯には諸説はあるが強烈な油臭の温泉がある。

その温泉は新津温泉と呼ばれている。

新津温泉のある新潟市秋葉区は、大正時代には油田の町として一時期隆盛を極めたとのことですがその後衰退。

目指す温泉はレンタカーを事前に設定をしたカーナビの通りに運転すると、なぜか道はだんだん細くなり、ついには行き止まりになった。

そして、ナビゲーターの彼女は「目的地付近に到着しました。案内を終了します」っと私に一言告げて黙ってしまった。

周囲には、目的の温泉はなく民家だけが建っている。

私は仕方なく、狭い道を苦労して車をバックさせて抜け出し、スーパーの駐車場に停めて辺りをうろつき、どうやらこのバラックが目指す温泉であることを理解した。

幹線道路からなら苦労することなく到着できたのに、文明の力に頼ってばかりの私に天はこんな場所で試練を与えてくれた。

 

扉を開けるとそこはまるで土建屋の事務のよう。

座っているおじさんに入浴料を支払って、廊下の奥にある浴室に向かう。

正方形の桝になっている脱衣棚に服を脱ぎ捨てて浴室の引き戸を開けると、プーんと鼻をつく香りはまさに油のにおい。

温泉らしくない「石油臭い」とか「油臭い」とかでないとなかなか言葉では表現できない。

さすが日本一の油臭といわれるだけのことはある。

内湯の浴槽にトロトロと注がれるその湯はちょうどいい泉温で、ひとりで長湯。

家に帰り、温泉を拭いたタオルに臭いを嗅いで残り香を楽しんだ。

そう、まるで一日はいた靴下をかいでいるような幸福感に浸れた。

源泉名:新津温泉
泉質:含よう素-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉
泉温:44.7度
PH:7.6
湧出量:20L/分

住所:新潟県新潟市秋葉区新津本町4-17-13
電話:0250-22-0842
料金:400円
営業時間:8:00-18:00

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