鹿教湯温泉の始まりは、丸子の里に住んでいた信仰心の厚い一人の猟師によるものでした。
ある日、その猟師は山の中で一頭の鹿を見つけ、矢を放ったのですが運悪く逃げられてしまいます。
その後鹿を追い求めると、背中に矢の刺さったままの鹿が気持ちよさそうに水浴びをしているのを見つけます。
怪我をしているはずの鹿は水浴びの後、何もなかったように元気良く走り去って行ってしまったそうです。
不思議に思った猟師がその水溜まりに手を入れてみると、それはこんこんと湧き出る温泉でした。
すると突然、猟師の前に文殊菩薩様が現れて、猟師の日頃の信仰に応えてこの温泉を教えたと告げ「この湯を広く世に知らしめ、病気や怪我を治すとよい。」と言ったそうです。
そのことから、鹿が教えた湯と言うことでこの温泉を「鹿教湯(かけゆ)」と呼ぶようになったと云われています。
そんな鹿教湯温泉の開湯は、約1200年前とのことです。
鹿教湯温泉には2軒の共同浴場があり、そのうちの1軒「文殊の湯」の近くにある「ふぢや旅館」に立ち寄り湯で訪問しました。
江戸末期の創業の老舗の温泉宿です。
入り口はこじんまりとしていますが、以外と奥行きがある大きな旅館で、奥にある宿泊棟は4階建てになっています。
入口のブザーを押して、日帰り入浴のお願いをします。
ご主人に建物奥の浴室まで案内していただきました。
階段を下ると浴室エリアになっています。
手間が男女の「共同大浴場」。
つまり混浴のことですが、この表示は初めてみました。
「共同」と言うと、地元の人達の共同浴場ってイメージで”男女共同”とはなかなかとらえられませんね。
この宿には別に「女湯」はありますが、「男湯」はなく男性はこの「共同大浴場」に入ることになります。
今回は日帰りでの利用ですが、ここの他に宿泊者専用に露天風呂もあるようです。
早速「共同大浴場」の浴室に向かいます。
結論としては、いつものごとく誰も来ないので、ゆっくり男一人で温泉を堪能さえていただくことになりました。
こちらが脱衣所。
もちろん、男女共用ですがこれはあまりに無防備。
これでは、女性はこちらの「共同湯」は絶対に利用しないからか、今では盗難防止の観点からコインロッカーを設置したとのことです。
ガラス張りの浴室で、それなりに年季は入っていますが掃除が行き届いているので清潔感があります。
窓の下には内村川が流れていて、屋根つきの橋として有名な五台橋も見ることが出来ました。
大きな主浴槽には鹿か牛かどっちか不明な動物(やぱり鹿なのかな?でも角はない)の口から温泉が注がれています。
この見事にこびり付いた白いヒゲのような堆積物はなかなか立派なものです。
主浴槽の左に小さな浴槽があり、こちらももちろんかけ流しの温泉。
湯量のわりに浴槽が小さいのでこちらのほうが若干熱めでした。
洗い場に設けられている各シャワーの水栓ハンドルには、飲泉用にコップが被せられています。
また水道の水も、渋田見山麓の水(鹿教湯用水)でおいしいとのことです。
ふぢや旅館は、一人か二人組しか宿泊客をとらない少人数制の珍しい旅館です。
いつか機会があれば一人でふらりと泊まりたい宿でした。
源泉名:鹿教第2号、3号、4号、5号、6号混合泉源泉
泉質:単純温泉(弱アルカリ性低張性高温泉)
住所:長野県上田市鹿教湯温泉1373-3
電話:0268-44-2204
立ち寄り湯料金:500円
HP:鹿教湯温泉 ふぢや旅館